塾長ブログ
2019.04.28
2020年から行われる大学入試には英語にスピーキングテストが導入されます。どのように採点するのでしょうか。TOEICを例に考えてみましょう。
2020年度から大学入試は大きく変わります。
これまでの『大学センター試験』が廃止され、新しく『共通テスト』に代わります。
これまでのマークシート方式の解答だけではなく、記述による解答も求められたり、問題も覚えたものをそのまま当てはめるのではなく、身に付けた知識をもとに問題で与えられた条件の中から類推するようなものが出されたり、と大きく様変わりします。
当然全体の難易度は上がり、単純に解答に一致すれば正解という訳にはいかない問題も増えるので、自己採点で自分の得点を予想しづらいなどの問題点が指摘されています。
確かに出願に際して自己採点での得点が信用できないのであれば、出願校を決める根拠が揺らぐので、学校選びも不安なものになります。
そんな中で、これまでとの大きな違いの一つに英語のスピーキングテストがあります。
英語を話す能力が試されるのです。
では、英語を話す力ってどのように採点するのでしょうか。
TOEICを例に考えてみましょう。
新しい大学入試に関して文科省は2020年度(現在の高校2年生が受験する試験)にセンター試験から共通テストに移行することを決定しています。
単に呼び名が変わったのではなく、内容もかなり違ったものになるようです。
その中で英語に関して、「共通テストでは英語の試験を行わない」ことを決めています。
これは受験に英語がいらなくなったことを意味するのではなく、英語の試験を民間の検定試験(英検、TOEIC、TOEFLなど)の結果で代用するというものです。
その一番の理由が「英語にスピーキングテストを導入するため」です。
つまり、スピーキングテストをしたいから英語の試験を民間に任せるというものです。
この件に関しては試験の公平性、費用の問題、生徒への負担の問題など様々な議論がありますが、とりあえず今日は民間テストではすぴースピーキングテストをどのように行っているか紹介します。
ちなみに、2020年度からしばらくは移行期間として受験生は民間の英語のテストに加えて、大学センターが実施する英語のテスト(これまでのセンター試験と似た内容になると思われる)の両方を受けなければなりません。
文科省はこのほうがより公平と考えたのでしょうが、果たしでどうでしょうか。
TOEICではスピーキングテストはパソコンを使て行います。
出題内容は、音読問題、質疑応答問題といったものから、写真を見て状況を説明する問題、ある情報やテーマをもとに自分で考えて意見を述べるといった問題まであります。
受験生はパソコンから出された問題に対して、付属のマイクに向かって解答します。
そのデータはオンライン上で採点者に送られ採点されます。
AIなどの機会を使うのではなく、人間によるアナログな採点です。
採点者の判断ということで、マークシートのように明確に正解不正解が分かれるわけではないので公平性という点で非常に不安を持たれる方も多いことと思います。
(同じ解答でも採点者によって正解不正解が分かれるというような)
この点に関しては、ETSの厳しい基準を通過した採点者が採点することで不公平性を極力なくしているということになっています。
学歴や英語指導経験などによる書類選考、ETSが開発したトレーニングなどをクリアして資格を取得、そして採点精度を維持するため、実際の採点開始前に「カリブレーションテスト」というサンプル問題の採点を行い、それに合格してはじめてテストの採点をすることができるそうです。
また、ひとりの採点者がひとりの受験者の回答をすべて採点するということはせず、受験者の情報を伏せた形で1問ずつ別々の採点者が採点を行い、採点者の先入観によるヒューマンエラーの発生を抑えるようにしているそうです。
採点基準は、コミュニケーション能力を重視するとのことです。
つまり、発音が完璧でなくても、“しっかりと伝わるか”といった部分が達成されていればいいのです。
TOEICではこのようにスピーキングテストが行われ採点されます。
他の検定試験ではまた別の試験方法と採点方法が行われています。
(英検では面接によって判断されます。だから、担当した面接官の裁量が非常に大きいのです)
もともとTOEICは社会人が自分の英語能力を図るために実施された試験で、合否を目的としたものではありません。
それに対して英検は各級の合否が目的で到達点は合格という範疇の中で一緒くたにされます。
他の民間試験もそれどれ毛色の違ったものです。
50万人の受験生が民間検定試験を利用するに当たり、本当にテストの採点も含めた質が保障されるのでしょうか。
TOEICでは厳しい条件をクリアした者だけが採点者になるということで質を担保とするということでしたが、これだけの規模に対応するだけに採点者を用意できるのでしょうか。
基準が高いだけに難しそうです。
さもなくば基準を落としても採点者の人数を確保するのでしょうか。
採点の質と量の問題、両立は難しそうです。
いろいろと疑問は感じますが、文科省は今更決定を覆して延期したりはしないでしょう。
受験生はいくら疑問があっても文科省の決めたルールで受験しなくてはなりません。
本当に大変なことになっています。
きちんとした準備をしないと太刀打ちできません。
それ以前に、当の大学入試センターが未だに明瞭に新しいテストの方針を提示出来ていないもの困ったものです。
この混乱の中、私立大学受験生が増加するとも言われています。
しかし、大都市の私立大学を中心に私立大学は募集定員を減らしています。
(その理由もやはり文科省にあるのですが、この点はまた別の機会に)
国公立は試験に疑問が残るし、私立は狭き門になっている。
受験生にとっては八方塞がりな感が否めません。
これからどうなるか全くわかりません。
混乱した現状に置かれている生徒たちに同情しますが、嘆いても仕方ありません。
やれることをやるしかないでしょう。
準備をしなくては合格できませんから。
葛西TKKアカデミーはそのような受験生のために全力を尽くします。