塾長ブログ

2023年11月

2023.11.09

恒例の『国語に恒例の『国語に関する世論調査』の結果が発表されました(その二)

 

恒例の『国語に恒例の『国語に関する世論調査』の結果が発表されました(その二)
間がかなり空いてしまいましたが、今年の『国語に関する世論調査』に関する議論の二回目を行いたいともいます。。
前回は主に言葉の運用に関する調査結果でしたが、今回は言葉の認識に関する話をしましょう。

なお、今回の調査ではローマ字表記に関する者も実施されたのですが、こちらは個人的にあまり関心がなかったので割愛させていただきます。

1.新しい意味での言葉の浸透

今回の調査の中の項目で、「言葉遣いに対する印象や慣用句等の理解」というものがあり、その中には次に挙げる言葉の現在急速に広まった新しい意味での使用について書かれていました。
次の五つの言葉が取り上げられています。

「寒い」・・・「冗談などがつまらない」という意味
「盛る」・・・「よりよく見せようとする」という意味
「引く」・・・「異様だと感じあきれる」という意味
「詰んだ」・・・「どうしようもなくなった」という意味
「推し」・・・「気に入って応援している人や物」という意味

これらの言葉自体は昔から存在していますが、上記のような意味で使われるようになったのは最近のことです。
この五つの言葉に対して、使うことがあるか質問したところ全体に対して、「引く」は70.0%、「盛る」は53.3%、「寒い」は50.2%、「推し」は49.8%、「詰んだ」は30.5%がイエスと答えています。
「詰んだ」を除いて約半数以上が使うことがあると答えていることから、これらの言葉の新しい意味での使用はかなり広がっていると言えるでしょう。
確かに生徒たちも話しているのをよく聞きますし、テレビでもこのような言葉遣いをしている場面をしばしば目にします。
更に、これらの使用について年齢別に細かく見ていくと、全体的に若い世代ほどこのような言葉遣いをしているのがよく分かります。
一般的に50代以下になると使用の割合が高く、特に10代、20代では「寒い」を除いた四つの言葉で8割くらいが「使うことがある」と答えています。

また、これらの言葉を他の人が使ったときに気になるかどうか質問したところ、「詰んだ」以外の四つの言葉では約8割が「気にならない」と回答しました。
しかし、「詰んだ」も6.5割が「気にならない」と答えているので、どの言葉も日常の中で当り前のように使われていることが分かります。
この質問の回答も年齢別に分析してみると、若い年齢の人ほど「気にならない」が多くなり、それは90%を超えていることがほとんどです。

言葉というのは日々変化し、これまでなかった意味でも、それが普及し人々が使えば当り前になり、その言葉は正規の言葉として認識されます。
今回の五つの言葉はそれを如実に現る結果となっているのではないでしょうか。
しかも、その広がりは若者を中心に広がっていることがよく分かります。
日本語は言語的にも変化の激しい言葉ではありますが、その原動力は若者にあることが推測できます。
そこに、SNSなどのデバイスの発達が拍車をかけているのではないかと考察されます。

2.ことわざ・慣用句などの理解

言葉は生き物で、時代を超えて激しく変化していきます。
ことわざや慣用句もそうで、本来とは違う間違った意味であっても、それを多くの人が正しいと受け入れ(誤解し)使えば、間違った意味の方が実践においては共通理解のできる正規の意味となってしまいます。
このことわざや慣用句などが本来の意味で使われているかどうかの調査は毎年行われていますが、この結果を見て初めて自分の言葉の理解が間違っている、思い込みだったを自覚することがとても多いです。
今年の結果だけでなくこれまでの結果も見て、皆様も正しい言葉遣いを見直してみてはいかがでしょうか。
今回取り上げられたのは次の五つです。

「涼しい顔をする」
「忸怩たる思い」
「情けは人のためならず」
「雨模様」
「号泣する」

「こんな言葉分かって当然」と思っているかも知れませんが、本当に正しく理解していますか。
ぞれぞれ見ていきましょう。
先ず、「涼しい顔をする」ですが、調査によると約6割の人が「大変な状況でも平気そうにする」という意味で理解しているようです。
しかし、本来の意味は「関係があるのに知らんぷりをする」で約2割の人しか正しく答えていませんでした。
「忸怩たる思い」は「残念で、もどかしい」と答えた人が一番多く、全体のほぼ半分に上ります。
本来の意味である「恥じ入るような思い」と答えた人は約三分の一となっています。
「情けは人のためならず」は「人に情けをかけておくと、巡り巡って結局は自分のためになる」という本来の意味が46.2%、「人に情けをかけて助けることは、結局はその人のためにならない」が47.7%でわずかばかり後者が多いですが、ほぼ拮抗していると言っていいでしょう。
「雨模様」は「雨が降りそうな様子」が37.1%、「小雨が降ったりやんだりしている様子」が49.4%で本来の意味の方が上回っているという結果になりました。
最後に、「号泣する」というのは元々「大声をあげて泣く」という意味で、30.3%の人がその意味で答えていましたが、42.1%の人は「激しく泣く」と回答していました。

今回の調査ではどの言葉でも本来の意味より誤った意味の方が、多くの人に理解されており、「涼しい顔をする」のような40%も違うものからほぼ同等の割合になっているものまで様々でした。
その差は何に由来するかは、この結果だけではよく分かりませんが、使用頻度が高い言葉ほど本来の意味がより強く残っているような気がします。



以上が今回の『国語に関する世論調査』のまとめになります。
毎回、この調査結果は私にとって、自分の使ってる日本語について見なおす良い機会となっております。
今年もたくさんの発見がありました。
自分の職業柄、本来の言葉の意味を正しく理解すると共に、実際の社会における使われ方にも注意して、誤解のないように上手にコミュニケーションを取る必要があると感じました。
皆さんはどう考えますか。
日本語について、もう一度見つめ直してはいかがでしょうか。

来年の調査結果も楽しみにしたいと考えています。

2023.11.07

今年の高校入試で変わったこと

今年の高校入試で変わったこと
今年度も高校入試が近づいてきました。
今月下旬には都立高校の入試の一部であるESAT-J(英語のスピーキングテスト)が行われます。
受験生はいよいよ本格的に志望校を考え始め、多くが模試を受け始めています。
こうした中、今年の高校入試の動向もだんだん見えてきました。
そして、受験生の動向には入試制度における各変更点が大きく影響しています。
そこで、今年の入試はどのように変わったのか、そして受験生にはどのような傾向があるのか考えてみます。
注目すべきポイントは二つ、合格者の男女枠の撤廃と5類に下げられた新型コロナウイルスへの対応の変化です。

1.合格者の男女枠の完全撤廃

今年の入試で一番大きな注目点は、合格者の男女枠の撤廃です。
これまでは各高校の男女比を保つために、合格者は男女別々に分けて判定されていました。
例えば100人合格ならば、男女それぞれ50名ずつ合格となります。
しかし、合格者の点数の幅は男女で同じということはないので、仮に100点満点中60点取っても、男子では合格できるのに女子では合格できないという事態が起こります。
同じ点数であっても男女という理由で合否が分かれるということです。
長い間男子と女子は区別して考えるのが当然とされてきましたが、男女の平等が叫ばれるようになって、性別による合否の違いは不公平ではないかという意見が強くなってきました。
そこで、東京都教育委員会ではこれまで段階的に、都立高校入試における男女枠の撤廃を進めてきました。
そして、今年から完全になくなるということです。

これまでの傾向として、女子の方が全体の点数が男子より高くなっています。
それが男女枠がなくなったことで、合格者の男女比は女子の方が高くなることが予想されます。
これまでの男子枠一部が女子に食われるということです。
つまり、男子はこれまで以上に入試が厳しくなるということで、合格するために志望校を1ランク下げて受験するということが考えられます。

2.新型コロナウイルスの5類への格下げ

次に今年から変わった点として、新型コロナウイルスが5類になったことによる対応の変化が挙げられます。
先ず、推薦入試において集団討論を復活させる学校があること。
これまでは新型コロナウイルスの流行で世間が敏感になっていましたが、だんだん社会的に終息の認識が広まり、かつての平常が戻りつつあるなか、これまでコロナ禍で行われてこなかった集団討論の実施に踏み切る高校が現れてきました。
当然受験生は集団討論への対応も求められます。

また、一般受験においても、新型コロナウイルスに感染した場合、これまでは追試、再追試が認められていましたが、再追試が廃止されます。
しかし、最近では以前のように表立って新型コロナウイルスが騒がれなくなりましたが、未だに新型コロナウイルスは存在しており感染者もいますので、受験生にとっては救済処置がない分、昨年度よりは受験が厳しくなったと言えるでしょう。

3.私立高校の難化

東京都によって私立高校の授業料が出ることになって、実質無償化になって以来、私立高校を第一志望にする受験生が非常に増えてきました。
特にコロナ禍で公立学校の対応が拙く勉強が滞ってしまった一方で、私立学校はオンライン授業などに既に対応していたため、授業を進めることができました。
この事実は多くの家庭に公立高校の脆弱性と私立高校の先進性を印象付け、私立高校人気を更に加速させる結果となりました。
そのせいで受験生が過多になったのでしょうか、いくつかの私立高校で教室やコース、入試制度を見直す動きがみられます。
これまでの推薦や併願優遇制度をなくしたり、コースをより難しいものだけにしたりした学校があります。
もはやこれまでのように、、私立高校は都立高校に落ちたときのための滑り止めという考え方は通用しなくなってきています。

4.その他、今年の傾向

その他、今回の入試の傾向として注意すべき点を挙げていきます。
都立高校一本で受験する生徒が非常に多いという最近の傾向が今年も継続しそうです。
一度きりのチャンスとなることから、多くの受験生は慎重になり、一つ上のレベルの受験生がランクを落として受験します。
そして、実業系の高校と都立の低いランクの高校は今年も倍率が低く、二次募集三次募集が見込まれます。



社会情勢の変化や制度の変更によって、受験にも影響が出るのが確実です。
現状に対応しながら各受験生は戦略を練り、それぞれの志望校を決めます。
今回の受験の最も大きなポイントは合格者の男女枠がなくなり、男子には厳しい受験になりそうだということです。
後、新型コロナウイルスが5類に下げられたことに伴う、高校側の対応の変化にも気をつけなくてはなりません。
前回同様の救済処置はありません。
それから、私立高校を第一志望とする受験生が増加した結果、いくつかの学校では入り口を狭くしているという点も見逃してはなりません。
これら今年の傾向を十分に考慮に入れて、受験生の皆さんはどのように入試を戦っていくか考えましょう。

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