塾長ブログ
2024.06.19
最近の中学受験について、その背景と注意点
教育改革による大学受験、高校受験の難化と不安定化は各家庭に、これまでのような受験による進学に不安を抱かせるようになりました。
その結果、大学関連校や中高一貫校への需要が高まり、中学受験をする受験生も急速に増えていきました。
そこで今回は中学受験についていろいろご説明したいと思います。
1.中学受験の需要が高まった背景
先ほども述べた通り、最近は中学受験が過熱しており、首都圏における受験者数は5万人を超えるほどに膨れ上がっています。
その原因の一つとしてあげられるのがコロナ下での学校の対応です。
コロナ禍において政府が学校の閉鎖を決めたとき、私立校ではオンライン授業に切り替えることで勉強が継続できたのに対し、公立校では完全に勉強がストップしてしまいました。
特に受験生を持つ家庭を中心に公立校への信頼が揺らいでしまいました。
そして、同時に私立校の提供する教育の質の高さが見直されるようになったのです。
また、教育改革による教育環境の変化と不透明感が大学関連校や中高一貫校への人気を高めました。
学習要領の変更に伴い授業内容も高度化し、それに伴い大学受験の問題レベルも難化しました。
新しい共通テストでは単なる暗記ではなく、これまで身に付けた知識をもとに考える問題が作られ、記述問題も増えた結果、多くの受験生には受けにくい試験になりました。
これに追随するように私立大学でも同様に入試問題が難化の傾向が強まりました。
さらに、英語のスピーキングテストに見られる入試の混乱が、「現在の入試制度では何が起こるか分からないから、準備がしづらい」をいう印象を与えました。
したがって、多くの受験生とその親は、大学受験をできれば避けた方がいいと判断したのでしょう。
難しい受験勉強、先行きがはっきりとしていない入試では子どもが苦労するので、安定して進学できる大学関連校や中高一貫校を目指す家庭が増えたと考えられます。
中高一貫校を希望する別の理由としては、中高一貫校の中には高校からの入学を受け入れていないところがあるというのがあります。
つまり、その学校に通うなら中学受験をするしかないということです。
それから、もう一つの大きな理由は、中高6年間連続して勉強ができるということが挙げられます。
途中で受験と学校が変わることによって、一般の学校の場合、勉強が一時途切れてしまいます。
しかし、中高一貫校でしたら6年間続けて勉強が進むので、その分きめ細かく高度な勉強も可能となり、時間的にもゆとりを持って授業が受けられるという考え方があるようです。
2.中学受験はいつから準備すべきか
仮に中学受験を目指すとして、いつから準備を始めなければならないのでしょうか。
一般的には小学三年生の後半から四年生の前半にかけて始める家庭が多いように思えます。
中学受験はことのほか受験範囲が広く、普通の学校の授業の勉強だけでは太刀打ちできないという背景があります。
学校では教えないような特殊算などの知識も必要ですし、課題を正確に理解し自分の考えを明確に示す表現力も必要なことが多いです。
これらを全て身に付けで受験に対応できるまでに仕上げるには三年はかかるとよく言われるからです。
基本的に小学四年生から五年生にかけての二年間で受験に必要な勉強の基礎を終え、最後の六年生で一年かけて応用問題や実践問題を通じて、志望校に合わせた受験対策をします。
もちろん小学五年生や六年生で受験勉強を始める人もいますし、それで合格する受験生もいます。
しかし、それは受験に必要な勉強を短期間でやらなくてはならないことを意味し、学校との両立も考えると非常に困難で時間も費用も掛かると覚悟しなければなりません(家庭教師による集中特訓など)。
これは受験生本人にも家庭にも精神的物理的負担を多く強いられることになります。
確かに志望校の偏差値が低く合格ラインも低ければ、受験生の学習レベルが高ければ、このような長い準備期間は必要ないかも知れません。
しかし、中学受験の過熱している現在においては、多くの学校で倍率が非常に高くなっており、十分な準備なしに希望する学校に合格することは困難です。
しかも、受験勉強は嫌でわざわざ志望校のレベルを下げることは、合格してもその後に受けられる教育の質の低下にもつながるので、短期的に見ても長期的に見ても良い選択肢とは考えにくいです。
どんなに困難でも上を目指して全力で準備すべきです。
さもなくば中学受験をする意味がありません。
3.中学受験で注意すること
・子どもが中学受験の意味を理解しているか
親は中学受験のメリットを理解し、その方が子どものためになると考えて受験勉強をさせます。
子どもたちが特に疑問も持たず親の言われた通り勉強するようであれば問題がないのですが、そうでない場合いろいろと問題が生じることがあります。
小学高学年と言えば自我も芽生えてくることで、世の中のいろいろなことに疑いを持つようになります。
当然、親の言うことも無批判に受け入れられないこともあり、親がなぜ中学受験をさせるのか理解できないこともあります。
「周囲の友達が普通に遊ぶ時間になぜ自分だけ難しい勉強をしないといけないのか」
そんなとき、親の子への思いは単に自分の嫌なことを強要し苦しめているだけという誤解につながります。
そうなれば、子どもの勉強に対するモチベーションも上がらず、単なる苦痛にすぎないから逃げることばかり考えるでしょう。
そうなると、親が塾などで大金を注いても成果は上がりません。
したがって、受験勉強を始める前に、自分がなぜ中学受験をするのか、その理由を本人がしっかり自覚するように説明、説得する必要があります。
本人が納得した上で中学受験の勉強を始めた方がいいでしょう。
・受験勉強に耐え得る基礎的な力が身に付いているのか
塾に入れたり家庭教師をつけさえすれば、子どもは受験に合格できると考えるのは間違えです。
仮に小学四年生で受験勉強を始めた場合、受験までの三年間でやるべきことは莫大です。
三年生までの学校で勉強した知識が十分身に付いていないのに、さらに高度な勉強に取り組むのは難しいです。
また、知識だけでなく学ぶために必要な力、理解力や表現力なども身に付いていないと、受験勉強を始めても結局何も分からずついていけなくなります。
このような非認知能力が備わっていない場合、子どもに中学受験の準備ができていないのでやめた方がいいかも知れません。
・学校の勉強と両立できるのか
中学受験は学校教育において強制ではないので、当然の学校の勉強を疎かにしていいわけはなく、他の生徒たちのやる勉強に追加する形で受験勉強は進みます。
学校の勉強と中学受験の勉強を両立できるかどうかは大きな問題となります。
両立に関しては自己管理能力やタイムマネジメントなども関わります。
例えば、受験勉強を始める前にそもそも毎日の勉強習慣が身に付いていないと厳しいでしょう。
時間はどの生徒にも同様に与えられているのだから、追加の勉強をするならば何かを削る必要があります。
時には受験合格という目的のために、何か自分のやりたいことを犠牲にし諦めるストイックさ、精神の強さも不可欠です。
これらができないようであれば、やはりその生徒は受験に向いていないと言わざるを得ません。
・精神的強さが備わっているか
中学受験は下手をすれば高校受験より厳しいとも言えます。
幼い子どもが受けるには、困難が大きすぎるかも知れません。
そんなとき、子どもに精神的強さがなければ、この試練を乗り越えることは無理でしょう。
苦しくても自分がやらなければならないことは成し遂げられるか。
自分の欲望に負けず、自分の好きなことやりたいことを後回しにしても、苦しい受験勉強に向き合う強さはあるのか。
また、塾などでは常に順位付けがなされ、受験生同士がお互いの立ち位置を明確にすることで競争心をあおり、受験勉強の動機付けを狙っているところもあります。
そんなとき、自分が順位を落としたり下位に甘んじることが、本人の心に大きなダメージを与えることもあります。
苦境をバネにできればいいのですが、そうでない受験生はどんどん精神的にうつ状態になることもあるでしょう。
これらは周囲の支援である程度改善できますが、子どもの性格性質成熟度によるところも大きいので、場合によっては中学受験を断念した方が本人のためになることもあります。
最近熱を帯びてきた中学受験について簡単に述べてみました。
とても注目を浴びている話題なので、これからも折に触れて話していきたいと思います。
もともと難しかった中学受験が、その需要の高まりで今まで以上に激化し、より狭き門となっているのは事実です。
中学受験は苦しいが、その分、合格したときに得られるメリットはとても大きいでしょう。
しかし、生徒の置かれている状況を考慮した場合、必ずしもそれが最善とは言えないこともあります。
それ以前に、生徒が受験生としてやれるのかという問題もあります。
その辺りは、本人を交えて家庭でしっかり話し合い共通理解を構築する必要があります。
ときには専門家に助言を求めるのもいいと思います。
三年間の受験勉強は長く苦しく費用もたくさんかかります。
だから、その決断は慎重に行っていただきたいと思います。
人生は長く、中学受験ばかりが道ではないので、何が子どもにとって一番良い選択肢がよく考えていただければと思います。
当然、葛西TKKアカデミーも中学受験の授業を承っていますしご相談も受けておりますので、必要な場合は気軽にお問合せください。