塾長ブログ
2025.03.19
「アクティブラーニングって何?」これからの日本教育のキーワード!
学校教育は日々変化しています。
その時代時代で教育観が変わり、学習内容、指導方法が大きく変わることもあります。
日本の公教育の場合、特に指導要領改訂のタイミングで大きな変化が起こることが多々あります。
中でも現在の指導要領に代わってからの変化には目を見張るものがあります。
前例を見ないと言っていいほどの大改革と言われていますが、その中の要となるものにアクティブラーニングがあります。
文科省は社会に活躍できる人材育成を目指し、知識偏重の教育ではなく、学んだ知識を用いて答えが一つではない様々な問題に生徒が取り組める教育を目指すことが新学習指導要領から分かります。
この目標達成のために導入されたアクティブラーニングですが、実際どのようなものなのでしょうか。
これを取り入れることで学校教育がどのように変わるのでしょうか。
なぜアクティブラーニング?
例えば数学の方程式を解く問題であれば、誰がやっても答えが同じで決まっています。
しかし、「学校の部活動で部員が活発に取り組むようにするにはどうすればいいか。」という問題は決して答えが一つではないし、決まった正解がある訳でもありません。
でも、このような問題は私たちが生きる中でたくさん直面するものです。
今までの知識偏重の教育は、課題を与えられ解法も与えられて、それを処理するには大いに役立ちます。
しかし、今後はそのような機械的な処理はAIが担うので、人間はそうではない分野で活躍できなければならないと考え、今回の教育改革となった訳です。
アクティブラーニングってどんなもの?
では、実際にアクティブラーニングとはどんなもので、どのように子供たちに解答のない問題に取り組むようにさせるのでしょうか。
英語を想定してみましょう。
英語を学ぶのに先生が文法や単語などを基本的には教えません。
代わりに例えば、「発展途上国の人々が教育を受けられるようにすればどうすればいいか」という課題を与えます。
生徒たちは自分たちで「発展途上国の教育の実態」調べます。
そして、自分たちでどうすればいいか話し合います。
最後に英語でプレゼンテーションをします。
この過程で、英文の資料を読まなくてはならなくなれば、自分たちで単語や文法を調べます。
意見交換も英語で行い、自分を英語で表現するにはどうすればいいか考えます。
もちろんプレゼンテーションも英語なので、自分たちで調べ英文の原稿を作ります。
そして、どうしても先生の助けが必要なときは、先生に質問しアドバイスなどをもらいます。
今までのように与えられて覚えるのではなく、自分たちで必要に応じて調べ学ぶのです。
この過程で英語の知識だけでなく、論理的思考や途上国の実情などを学ぶのです。
そして意見交換では相手の意見を要約し正確に理解し、更に相手を説得するにはどうするかというディスカッションの能力も求められます。
こうやって英語の知識と運用能力を身に付けるのです。
アクティブラーニングの課題
これらの事柄を身に付けられるアクティブラーニングは非常に理想的な教育方法に思われます。
しかし、「問題はこれが効果的に実践できるのか」ということです。
アクティブラーニングにおいて教師の役割は知識を与えるというより、生徒が活発に学ぶように促すことです。
これには豊富な知恵と知識と多くの経験が必要です。
なぜなら、生徒の状況は一様ではないので状況に応じて臨機応変な対応が求められますし、授業を盛り上げるために時には冗談や笑いのネタなども言えないといけません。
課題も様々なのでどんな問題でも対応できる幅広い教養が必要です。
経験がないと、機転を利かせ生徒のモチベーションを高め、自分からやる気にさせるのも難しいでしょう。
また、生徒の行動に頼る部分が多いので、狙い通りの内容を身に付けさせるのも難しく、学習時間も今まで以上にかかるでしょう。
限られた時間で指導要領に書かれている全ての要項を習得できるかどうかは、生徒を暗示的に目的に向かって導けるかどうかという指導者の技量にかかる部分が大きいのです。
しかし、そもそも基礎的知識を身に付けさせるだけでも今まで精一杯だったのに、更にそれを使って論理的に展開し課題に取り組むまで持っていけるのでしょうか。
また、それぞれの生徒で異なる学力や性格、姿勢などをどのように評価すべきなのでしょうか。
よくあるのが、どうしても人前で発表するのが苦手で何も言えない、もしくは発表するのが面倒くさい、そんな生徒をどのように見なすかです。
相手の意見を面白いと思う、自分の考えを言うのが楽しくなる。
これは生徒の問題というより、そのような気持ちに生徒を導けるかという先生の問題とも捉えられます。
いかに生徒の知的好奇心を刺激し、授業を活気づけられるかによって、生徒の学びも大きく左右されます。
そう考えると生徒の勉強に向かう姿勢も先生の指導によるところが大きく、生徒の評価が低いということは先生の指導が悪いということもできます。
そもそも欧米などで実践されているアクティブラーニングですが、日本のように40人もの大人数で試みた例はありません。
ご存知のように無効のクラスはせいぜい20人程度で、このようなきめ細やかな教育をこんな大人数のクラスに適用させてうまくいくのかは、実は誰にも分らないのです。
先ほど述べた教員の経験の問題に加え、アクティブラーニングを行う環境も考える必要があると思います。
これまでの教育とは大きく違う教育になるのだから、それにふさわしい環境を整える必要があるのです。
ようやくオンライン授業用のWifiや端末などが公立学校でも揃ってきましたが、十分に使いこなせて活用できているかというと、そうとも言い切れません。
不十分な学習環境で果たしてアクティブラーニングを実施しても大丈夫なのかと心配にもなります。
他にもアクティブラーニングを実践するにおいてクリアすべき課題はたくさんあります。
上手くいけば非常に有効な教育方法ですが、そうでなければ結局基礎知識すら身に付かないリスクがあります。
そして、そのリスクは一人ひとりの生徒や先生によるところが大きく、下手をすれば個人差をより広げる教育になりかねません。
言い換えれば、学ぶ側も教える側もアクティブラーニングの意図をよく理解して授業を受けないと、その意義は薄れてしまうのです。
以上の点に注意してアクティブラーニングを有効に活用し、子供たちの学力向上につながってほしいと願います。