塾長ブログ

2020.05.05

学校再開に向けた動きが出始めています。再開した時にどうやって遅れを取り戻すのか。いくつかの案の利点と問題点を考えます。

学校再開に向けた動きが出始めています。再開した時にどうやって遅れを取り戻すのか。いくつかの案の利点と問題点を考えます。

緊急事態宣言の延長を受けて多くの学校は5月いっぱいまで休校の見込みです。
政府は状況をみて宣言の短縮もあり得ると言っていますが、学校は今月中や休みとみていいでしょう。
まだ、具体的なことは何も決まっていませんし、決まったとしてもその準備には時間がかかります。
問題は6月以降はどうなるかです。
文科省はいろいろ考えているようですが(考えているようなそぶりですが)、いつも最後は自治体の判断に任せるというだけです。
学校再開後のクラスター発生と感染の拡大が起きたときの責任逃れのようにも聞こえますが、本日は学校再開後はどうなるのか議論されている政策案について考察してみます。

1.夏休み短縮や土曜登校などで通常以上の授業時間の確保で遅れを取り戻す
今、多くの自治体で考えられているのがこの案です。
3月から考えれば3か月分、6月以降も休校が続くなら更にそれ以上の授業数が行われないままとなります。
学校再開時にはそれを取り戻さないといけないのですが、問題はどうやってこれだけの時間を確保するかです。
既に学校行事の縮小や中止も検討されていますが、それだけでは当然足りません。
そこで考えられているのは一日の授業時間を7限目までにし、加えて土曜授業、それから夏休みを短縮して失った分の授業時間を確保するというものです。

利点としては予算が少なくて済むし分かりやすく実行しやすいという点があげられます。
しかし、子供たちへの負担はかなり大きくなります。
子供たちが楽しみにしている夏休みや年中行事を削って、学習意欲が保たれるのだろうか。
これまで以上に勉強に取り組まなくてはならず、集中力が持続するだろうか。
家族や友達と過ごす自由な時間、自分の好きな趣味などに費やす時間も人間の成長を考えたとき重要なのではないか。
単純な時間のつじつま合わせになって、学習効果が本当にあるのか。
反って勉強が身に付かず、勉強嫌いの子供をより多く生み出すのではないか。
様々な問題点が指摘されています。
緊急事態だからと言ってなりふり構わず子供たちの時間を奪うことは、子供たちの健全な育成につながらないと思います。
教育の目的はただ決められた学習事項をやればいいというものではありません。

また、教員も休みが削られた分過剰労働となり、十分な教育ができるのか。
そうでなくても最近、学校教員はブラックな仕事だということで問題になっています。
そうでなくても過労死ライン越えの過重労働が指摘されているのに、更に過酷な状況で授業の準備もままならなくなるでしょう。
特に夏休みは、教員は休みではなく研修などをたくさん受けるときで、それができなくなることで授業の質が落ちるのではないかという懸念もあります。
また、部活では大会やそれに向けた練習もありますが、これではまともな部活動はできないでしょう。
生徒の中には部活での進学を考えている人もいますが、当然彼らには不利になります。

これらの問題点を考えると実行は簡単ですが簡単に話を進めていいものでもないでしょう。
詳細までよく検討し、指摘される問題点をいかにクリアしていくかがカギとなります。
しかし、現実的にはかなり厳しい問題で、やるならどこかでしわ寄せが出るでしょう。
そのしわ寄せを誰が被るのか、きちんと納得して受け入れられるのかという問題も出るでしょう。

2.先端技術を使って授業のスピードを上げる
これは学校で重点的にする内容と学校では簡単に済ませる内容を分けてメリハリをつけた授業を行うというものです。
家庭学習等で生徒が予習を行うことで授業に要する時間を短縮できる。
練習問題や宿題はICTを活用して、生徒それぞれのレベルにあったものを提供することで、生徒の習熟と習得を図りつつスピードを上げて勉強を進めます。
これは学校の年間スケジュールは大きく変えないので社会的影響は少なくて済みます。
しかし、スピードが上がるということはそれだけついてこられなくなる生徒が増える可能性が高いということです。
休校中の過ごし方ですでに生徒間には教育格差が生じていると言われます。
この方法はそれを更に拡大させる恐れがあります。

また、生徒が学習内容をきちんと理解しつつスピードを上げるということは、教員の腕により左右されるということでもあります。
能力のある教員ならいいのですが、そうでない場合、どんどん先に進むだけで誰もついて来ていないということもあり得ます。
特にICTなど最新技術の経験が浅い教員ならば、その力を十分に活用できず、技術的トラブルが起きたときの対応もできず、反って授業以外のところで時間を取られ進度が遅れるのではないかという心配もあります。

授業を駆け足で行うということは、その分家庭学習など生徒に頼る部分も大きくなり、更に新指導要領が目指す探求的にな学びができなくなるということでもあります。
実は今年度から学習指導要領が改定され、これまでの暗記中心知識偏重型の教育から自分から考え探求し問題解決を目指すアクティブラーニングなどを含む「21世紀型」の教育に変わります。
これは小学校から大学まで巻き込む大改革で、それに伴い授業内容やカリキュラムが評価方法など大きく変更されています。
これまで以上に学習活動が濃厚になる中、コロナウイルスの拡大が起こり、そうでなくても教員も未経験でどうなるか手探りの状態なのに、更にスピードアップして本当に全ての学習内容を目的通り終わらせることができるのか疑問です。

3.9月入学
三番目は「9月入学」です。
これはちょうど先日触れたばかりなので、そちらを参考にしていただきたいと思います。
これはコロナ以前から海外の年度と合わせることになり、これまで海外の学校に入学するには年度が違うため半年待たなければならなかったが、この問題を解消できるということになります。
しかし、これを行えば保育園から大学まで全ての生徒児童を半年ずらさなければならず、その混乱は単に学校教育に収まらず、就職など社会全体に及ぶでしょう。
受験生は9月からスタートを仕切り直しできるので、このまま4月入学に合わせた受験よりは楽になり、コロナによる混乱と休校の影響を小さくでき、より公平で公正な受験が可能となるでしょう。
入試は教育改革に伴い大きく様変わりする予定で、初めての入試様式に向けて文科省も準備を続けてきただけに、簡単に変更はしないように思えます。
しかも、コロナウイルスの影響のある今年度だけ行うものではなく、一度変更してしまえばその後もずっと続くものであり、様々な制度上の変更も必要になってきます。
文科省や自治体に今それをやる余裕があるのでしょうか。
コロナウイルスだからと言って、それに便乗するようなやり方で変更すべき問題でもないという指摘もあります。
半年ずらすということは半年分の費用が余計にかかるということでもあります。
(更に、半年卒業が遅れるということは半年分の収入が減るということでもあります。)

4.学習内容の削減
休校が長引きすでに3か月分、状況によってはこれから更に多くの授業内容が停止状態になります。
学校が再び始まっても本当にこれらを取り戻せるかかなり怪しくなっています。
物理的にも休校中の勉強の回収は難しいと思われ、それならば今年度の学習内容は特別にカットするという考えです。
手続等多少の労力は必要になるでしょうが、文科省がどの内容を今年度は省略するか示すだけで実行は比較的楽でしょう。
(やらない分を来年度に回すなどすることで授業内容を取り戻すのに余裕ができます。)
焦って急ぐ必要もなくなるので、生徒も教員もゆとりをもって授業に取り組めます。
しかし、内容のカットは制度上文科省が決断しなければならないことで、各学校自治体が勝手にすることはできません。
今のところ文科省にはこの動きはないように思われます。
また、学習内容によってはカットが難しいものもあります。
特に英語や数学など、積み上げ式の色合いの濃いものはその内容選定は厳しいでしょう。
更に、受験に学習内容の変更を反映されるようにしないと、入試で最も重視される公平性と公正性が確保できません。
また、「ゆとり教育」のときがそうであったように、未修学部分が社会人となったときに不利になることも考えられます。

以上、四つの案について考えてみました。
いずれも長所と短所があり、完ぺきな解決方法はありません。
との痛みは回避しどの痛みは受け入れるかという問題かもしれません。
また、入試を考えると遅くとも夏休み前までには方針を決めないと受験の混乱は必至でしょう。
(一般的に、入試問題は6月くらいまでに内容が検討され10月くらいには印刷されるからです。)

今回、話を一番ややこしくさせた原因は文科省が全国一律ではなく、各自治体ごとに対応を任せてしまったことでしょう。
これにより再開した時に、休校中の勉強の対応だけでなく格差縮小の対応もしなくてはならなくなりました。
地域ごとの状況が違うとい意見は分かるのですが、全ての生徒が同じように進学することを考えると、ここは文科省がリーダーシップを発揮し、早くから全国の学校に同等に、この異常事態にどのように対応していくかを示すべきでした。
今となってはもう遅いのですが、これが非常に残念でなりません。

どのようなシナリオになるのかはまだ分かりません。
これまでの対応を見る限り、政府は対処が遅く思慮も不十分で決断力にもと欠けると言わざるを得ません。
だから、政府の対応を待ってから行動するようでは、結局生徒が一番損害を被ることになります。
そうならないためにも、どのような事態にも対応できる備えをすることが利巧です。
葛西TKKアカデミーはそのために皆様の力になる用意があります。
お金とかいろいろ心配もあるでしょうが、今はそんなことは置いておいて、とにかくご相談ください。
今、ここで何とかしないと子供たちの一生に関わります。
ためらわないで、先ずは行動してください。
葛西TKKアカデミーは助けを求める手を決して離しはしませんから。

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