塾長ブログ
2020.05.06
コロナウイルスの影響で日本の教育は混乱を極めています。海外はどうでしょう。教育の先進国と言われるオランダの公立小学校の例を見てみましょう。
コロナウイルスの脅威が世界を席巻しています。
日本では総理大臣の休校要請により、3月2日から春休み終了まで学校を休みにすることを決めた自治体が多くありました。
その後も収束の兆しが見えず、生徒の安全を考えゴールデンウィーク明けまでに延長。
更に再延長。
中央からの突然の休校の通達により、学校の現場、家庭は大混乱。
学校では、三学期も半ばでまだやり残している授業をどうすればいいのか、年度末の行事の多い時期にどう対応すればいいのか、何よりも早急の問題としてすぐに始まる休校の間、生徒をどうさせればいいか。
十分な時間も与えられず準備もままならないまま休みに入ってしまいました。
家でも急に子供が家で過ごさなくてはならなくなり、親がはたらいている間どうすればいいのか。
特に一人で留守番のできない低年齢の子供のいる家庭では、誰に子供を見てもらえばいいのか。
突然のことに何も分からないまま休みに突入したわけです。
突然の休校と混乱、そして十分な対応がなされないまま月日が過ぎてしまいました。
では、海外ではどうだったのでしょうか。
何か日本のヒントになるかもしれません。
ここではユニセフから「世界一の教育」と認定されたオランダの例を見てましょう。
これはオランダで新型コロナウイルスの脅威が広がり、日本と同じように学校が休校となったとき、実際にオランダに在住していた日本人の母親の話です。
突然の休校
3月15日の午後5時半、政府から学校及び託児所の一斉閉鎖が言い渡されました。
しかも、休校は翌日の16日からとりあえず4月6日まででした。
日本と同様に、オランダの学校も突然のことで驚いたそうです。
なぜなら、3月12日では首相が「学校の休校はない」と発言していたからです。
だから、誰もがまさかこんなに急に発言が覆されると思ってなく、十分な準備はしていませんでした。
更に政府は医療、警察、公共交通機関及び消防等に従事する親のため、学校及び託児所での受け入れを無料で手配すると、緊急提言に付け加えました。
これは学校は休校準備のみならず、そういった職業の保護者をもつ生徒の把握を行わなくてはならないことを意味していました。
テレビの緊急提言の数分後には、日曜にもかかわらずすでに学校から保護者当てにメールが届きました。
その内容は、休校中の預からなくてはならない生徒を把握するため必要な家庭は教えてほしいこと、翌日には教師と遠隔教育を実現する方法について計画立てること、可能な限り最高の教育を提供するため最善を尽くすことだったそうです。
このメールによってこの母親は教育が止まることないのだと安堵しました。
1日目
学校から何通ものメールが届く。
その要点は
1.休校中の勉強は水曜日(翌々日)から始められるように努める。
2.「Social School(学校と保護者との連絡用アプリ)に生徒本人のアカウントを作ること。休校中はこれで生徒と教師がやりとりする。
3.教材アプリを使ってオンラインで行う勉強もある
4.デジタルデバイスやwifi環境が無ければ教えてほしい
ということでした。
オランダの小学校ではデジタル化が進んでいて、通常授業にiPadなどをすでに導入して授業を行っています。
ここで使ているアプリを自宅学習でも活用するのだそうです。
家庭に複数人の子供がいて全員にデジタルデバイスが行き届かないときは、学校が貸し出しなどで柔軟に対応することもできます。
2日目
予告通り水曜には自宅学習用の教材の用意ができ、各家庭が取りに来るように連絡が入った。
日本と同じように感染を防ぐため、可能な限り一人で取りに来て、受け渡しは強者の入り口、イニシャルごとに時差で来校するようにしました。
3日目
教材の受け渡しが行われました。
既にバッグに入った教材が用意され、受け渡しはものの数秒で終わりました。
中には、休校中3週間分の勉強スケジュール、読書記録表、コロナウイルスに関するクロスワードパズル、第二次世界大戦に関するストーリーとワークブック、算数解説プリント、書き取りドリル、新しいノートが入っていました。
(このときは戦争をテーマにした勉強をしていて、その資料をそのまま渡される。)
この時点でオランダの学校の88%でほぼ完全に遠隔教育が実現されたそうで、9割の小学校が似たような速さで遠隔教育の準備を進めたそうです。
4日目以降
こうして自宅学習が始まりましたが、休校中でも教師は生徒と連絡を密に取っていました。
教師はチャットで生徒の質問に可能な限り即答し、オンラインBasisipoortというサイトに教材を用意し、ログインすれば生徒が受け取れるようになっていました。
ドリルなど紙ベースの教材は、一日ごと担任当てに画像をアップロードするようになっていました。
体育の教師が運動のビデオを送ることもありました。
更に毎日あいさつを兼ね教師から生徒へ質問メールも届きます。
内容は「無人島に行くなら誰と行く?」というような他愛もないものですが、これを通して生徒との交流が保たれています。
これだけの体制を突然の休校要請からたった二日で作り上げたことは、称賛に値します。
保護者としては「意外なほどすんなりと移行できた」という印象だったそうです。
オンライン授業よりも自習に重点を置いたのも自宅学習への移行を円滑にした要因ではないでしょうか。
もちろんすでに普段から教育ソフトを活用し、生徒も教師も慣れていたことも大きいと考えられます。
オランダの授業は日本ほど講義中心ではなく、教わるというより自分で学ぶというスタイルがメインなので自宅学習でもさほど支障がなかったのかもしれません。
以上が、オランダの小学生の母親の体験と感想でした。
日頃の教育に対する取り組みの違いが、この有事における対応の違いとなって現れたのではないでしょうか。
いち早くデジタルデバイスを普及させ、日頃からこれらに慣れていたので、自宅学習になってもさほど移行に問題が起きなかったようです。
日本も随分前から導入を言われていたのですが、実際には遅々として進まず、今回の件で慌ててオンライン授業とか叫んでいますが、とても間に合いません。
そして、各学校がほんの二日で休校中の課題を用意できたのは驚きです。
これは教員の教育に対する責任感からか、熱意からなのか。
学校システムの違いも関係するかもしれませんね。
(日本では現場任せでありつつ、裁量の自由度は非常に低いと思います。)
また、学習スタイルも「自ら学ぶ」というもので、日本のように学校に頼りっきりの教育でないことも、自宅学習が可能だった理由でしょう。
そして何よりも、早い時点で学校及び政府が「教育の保障」を明言したことにより家庭の不安を取り除き、安心感を与えられたことが最も大きなカギのように思われます。
こうして心に余裕ができれば、家庭も協力的でいられるし、実際に毎日の教師とのコミュニケーションが目に見えて分かり、学校が実際に子供への教育を疎かにしていないことがはっきりと伝わるのも重要なポイントだと思います。
先行きが全く見通せず不安ばかりの日本の教育とは大違いですね。
オランダの例は大きな社会レベル、学校などの組織レベル、そして家庭や生徒と教師など個人レベルの各レベルにおいて非常に参考になると思います。
しかし、だからと言ってこれらをそのまますぐに日本に当てはめることができるかというと、そうはいきません。
体制が違いすぎます。
では、どうすればいいのでしょうか。
オランダの実践から得られた教訓に学びつつ、日本の現状にどう向き合うか。
文科省や自治体が明確な指針や具体的な対策が示されないのであれば、個人レベルで対応するしかないのではないでしょう。
そして、葛西TKKアカデミーが困ったときは必ず力になります。
どんなことでも構いません。
先ずは相談してください。
救いを求めていることを知らせてください。
そうすれば私たちの手が届きますから。