塾長ブログ
2021.04.29
中学で習うメンデルの遺伝の法則。その中の「優勢の法則」ですが、今年度から用語が変わるそうです。
葛西TKKアカデミーのニュース
皆さんは中学のとき遺伝の勉強で「メンデルの遺伝の法則」を勉強したことを覚えていますか。
修道院のメンデルという人がえんどう豆を使って交配実験をし、遺伝の基礎となる法則を発見した話は有名です。
彼が発見した「優勢の法則」「分離の法則」「独立の法則」は現在でも通用しますし、多くの中高生が学校で学ぶ項目となっています。
ところで、今回話題になっているのは、メンデルの遺伝の法則の中の「優勢の法則」です。
今年から新しい学習指導要領になり、学校の多くの場面で変化が起こっています。
中学の教科書も新しくなり、その中の理科では「優勢の法則」に関して、これまで使っていた「優勢・劣勢」の言葉が見直され、「顕性・潜性」という言葉に変わります。
「優勢・劣勢」とは何かというと、生物が親から受け継いだ、その形の特徴を生み出すのに遺伝子が大きなファクターとしてはたらきます。
その時、表れやすい形質と表れにくい形質があります。
その表れやすい方の形質を「優勢」、表れにくい方を「劣勢」と呼びます。
例えば、天然パーマの髪とストレートの髪では、天然パーマの方が「優勢」、ストレートの方が「劣勢」となり、親のどちらかが天然パーマの場合、子供の髪質も天然パーマになる可能性が高くなります。
しかし、「優勢」だからと言って、天然パーマの方が優れている訳ではありませんし、ストレートヘアーは「劣勢」だからと言って劣っている訳ではありません。
あくまでも形質の出やすさにおいて「優勢」であり、「劣勢」であるということです。
ところがこの「優勢」「劣勢」の表現が誤解を招くとして随分前から指摘されていました。
まあ、きちんと理解していれば優劣を言っているのではないことは簡単に分かるのですが。
「優性遺伝子の方が優れているから優秀だ」という誤ったイメージを持たせるとかねてより言われていました。
私が中学生のときも、生物の先生に「優勢」「劣勢」という言葉はミスリーディングを引き起こすから変えた方がいいと言われたのを覚えています。
遺伝に関する科学的な考え方は、元々、外国からもたらされたもので、それを訳して日本国内に普及させました。
当然外国語なので日本語に置き換えなくてはならないのですが、当時数々ある訳語の中から「優勢・劣勢」が一般的に中学の教科書で扱われる用語となりました。
(因みに、英語では「adominant」「recessive」となっています)
このような経緯から、「優勢・劣勢」という表現は差別的という批判がかねてよりあり、それがようやく改訂されることです。
「優勢・劣勢」よりも「顕性」「潜性」の方が優劣のイメージがなく、表に出ているか潜っているかという意味なので分かりやすいという意見もあります。
これまで何年、何十年も「優勢・劣勢」で慣れてきたものからすれば違和感があるかもしれませんが、これから勉強する生徒たちにとってはそんなものはなく、他の用語と同じように受け入れられるのではないでしょうか。
ただ、これからお子様と以前の話をするときは「優勢・劣勢」と言わず「顕性・潜性」と言うように気をつけましょう。
学問というものは日々進化し変化することがしばしばあります。
今回の遺伝の話は単純な用語の変更ですが、新しい発見や新しい考え方が生まれると、それまでの科学的常識と思っていたものが、ガラッと変わることもあります。
かつては地球は平らで世界の中心と考えられていたのに、天文学や科学技術の進歩により、今では多くの人がそうではないと考えています。
遺伝などの科学的分野に限らず、社会的理念、歴史的事実など多くのことが何かをきっかけに間違いと分かり、正しいものに変更される。
そして、学校ではこれまでと違う新しい考え方が教えられます。
そうして、世代間の知識も実は少し異なるのです。
もっと身近な例を挙げると、「いい国作ろう鎌倉幕府」なんて覚えていた鎌倉幕府の成立(1192年)が今では「いい箱(1185年)作ろう」になっています。
「仁徳天皇陵古墳」も今では「大仙陵古墳」となっています。
(実は埋葬されているのが誰かははっきりしないため)
このように学問は日々変化し、時には我々が習ったことと今、生徒たちが学んでいることが違っている場合があります。
教える側としては知識を常に最新のものにアップデートしないといけないということです。
家庭においては「お父さん、お母さんが習ったときはこう言っていたんだよ」なんて話して勉強を通して親子の交流を深めるのもいいかも知れませんね。
または、一緒に学ぶということで子供の勉強を促すこともできますね。
知識のギャップを上手く利用して、子供の勉強を進めていくのもよい方法です。