塾長ブログ
2022.05.16
文科省が進める”GIGAスクール構想”って何?
現在、日本の学校教育は従来の教育から大きく転換し、新時代に子供たちが困らないよう新しい教育体制へ移行しつつあります。
この度の大学入試におけるセンター試験から共通テストへの移行も、これら教育改革の中の一つです。
日本の教育が、その理念、方法、環境とあらゆる面で生まれ変わろうとしています。
その中で文科相が打ち出しているのが「GIGAスクール構想」です。
今回はこの文科省が目指す新しい教育スタイルについてご紹介します。
「GIGAスクール構想」とは
「GIGAスクール構想」は2020年に文科省が発表した新しい学校教育の在り方です。
これは学校のICT環境を整えて、高速大容量通信ネットワークを使い、日本全国全ての生徒が一人一つずつ端末を使えるようにすることで、特別支援を必要とする子供を始め様々な状況下にある子供全てを誰一人残すことなく、公正で最適化された教育を提供し、全員の資質と能力を育てる構想です。
これまで蓄積された教育実践におけるノウハウにICTを取り入れることで、学習活動がより充実し、主体的かつ対話的なより深い学びが得られる授業が受けらるとのことです。
調べものはインターネトを使って調べ、それらの情報を収集する過程で情報の整理分析取捨ができる能力が身に付く。
そして、パソコンを使うことでこれまでのような文章だけによる表現にとどまらず、写真、音声、動画などいろいろなメディアを使った発表、発信、作品ができるようになります。
更に、通信ネットワークを使うことで、遠距離や離島など地理的不利を解消すると同時に、これらのこれまで学習機会に触れるとが難しかった、もしくはできなかった生徒たちにも都心の生徒と同じように学習のチャンスに触れられます。
しかも、ネットワークの利用は学校内の枠を超え、リアルタイムで区域外、海外の生徒と共同して活動できるようになりますし、大学や専門機関との連携も可能となります。
デジタル教材を使い、誰もが分かりやすく興味を持ちやすい教材が提供でき、生徒一人ひとりの反応や考えを瞬時に捉えて、先生と生徒が双方向に発信しながら授業を進めることもできます。
しかも、小テストなども全てデジタル教材で行うので、クラス全体だけでなく生徒一人ひとりの学習習得状況も把握でき、それぞれの進度に合わせた学習教材支援を提供もできます。
更に驚くべきことは、これらの各教科の学習活動を横断的につなげSTEAM(Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics)教育を実施することが可能で、実際の社会問題解決に向けた教育を行えるようになるそうです。
その探求の過程においてもICTを活用でき、課題の設定(社会もんだなどの現実にある問題を見つけ出す)、情報の収集(資料、文献の検索などICTを使っての情報を探す)、整理・分析(自分が集めた情報を統計や思考ツールなどで分かりやすくまとめ理解する)、まとめ・表現(自分たちの研究を論文にしたり、パソコンを使ってプレゼンテーションで発表したり、これらを多彩なメディアを通じて発信する)の全ての段階においてICTが有機的につながり、効率的に活動できるようになります。
また、これらの探求における、情報収集発信を通して情報に関するモラルも学べるということです。
以上が文科省が発表した「GIGAスクール構想」です。
文言だけ聞いてみると、まさに教育の理想形であり、教育における様々な問題を解決し、教育のレベルをこれまでにないくらいに押し上げてくれるように思えます。
「GIGAスクール構想」を進めるきっかけ
今回のコロナ禍では、ICTが整っていた多くの私立学校はそのまま一斉休校中でも学習を継続できた一方で、ICTがあまり進んでいなかった多くの公立学校では学習活動はほぼできなくなり、結果、両者に通っている生徒間の学習格差が広がったと指摘されています。
コロナ禍で休校が相次ぐ中、保護者や生徒からのオンライン学習の要望も高まり、文科省もGIGAスクール構想を前倒しして、公立学校全ての生徒への一人一端末を実現し、これらを使った授業やオンライン学習を実施しています(内容としてはまだまだ検討の余地がありますが)。
また、災害などの緊急事態でもICTを活用できれば、勉強を滞りなく進めることができるとも期待されています。
日本の学校におけるICTの利用はOECD諸国の中でも最下位で、ほとんど活用していないことが分かります。
当然、日本の教育はICTという観点において、諸外国から大幅に遅れを取っており、これも文科省が「GIGAスクール構想」を推し進めようという理由になっています。
更に付け加えるならば、これか技術が進みICT化がより身近になる世界において、これからの日本の若者が対応し、諸外国と対等にやりあえるようにしなければならないという、経済界からの要請もあるように思えます。
いずれにしても、これからの学校教育が大きく変わり、私たちがSFの映画やドラマで見ていた場面が、現実の教育現場で見られるようになると予想されます。
生徒の話を聞くと、確かに一人一端末は配られているようで、端末を家に持って帰ってオンラインのデモンストレーションをやったりもしているようです。
しかし、文科省が述べているような学習ができているかというと、まだ十分とは言い切れない感じです。
理由の一つは教員の訓練と経験が不十分であることだと思います。
制度が変わるとき、設備などのハードの面は比較的楽に整えることができますが、それらを生かし使いこなすノウハウや人材と言ったソフトの面の育成は時間が掛かります。
構想や設備は素晴らしくても、それらを上手く使いこなし、実際に生徒たちの教育に成果を出せなければ宝の持ち腐れです。
本来ならソフトの面もしっかりと準備した上で実行すればよかったのですが、コロナ禍や経済界の要求など様々な要因が絡んで見切り発車になった感は否めません。
生徒がGIGAスクール構想の利益を享受するまでには時間がまだかかりそうです。
そして、十分に生かされないままGIGAスクール構想が廃れて、これまでの費用が無駄にならないことを願います。