塾長ブログ
2022.12.27
言語習得の秘密が!”this・that・it”と”これ・あれ・それ”は同じではありません!
英語の時間で「thisは『これ』、thatは『あれ』、itは『それ』と習ったかもしれません。
しかし、この教え方は必ずしも正確ではなく、後で分からなくなって混乱する生徒がたくさんいます。
英語の勉強のよくある誤解です。
辞書を調べるとthatには「あれ、それ」と書いてあり、itも「それ」と書いてあって、どうしてthatにも「それ」書いてあるのか、itとの違いは何か分からなくなった経験はありませんか。
今回はこのことについて説明したいと思います。
しかし、この教え方は必ずしも正確ではなく、後で分からなくなって混乱する生徒がたくさんいます。
英語の勉強のよくある誤解です。
辞書を調べるとthatには「あれ、それ」と書いてあり、itも「それ」と書いてあって、どうしてthatにも「それ」書いてあるのか、itとの違いは何か分からなくなった経験はありませんか。
今回はこのことについて説明したいと思います。
日本語の「これ・あれ・それ」
よく「これ」は近くで「あれ」遠く、「それ」は中くらいの距離と考えている人が多いですが(それもなくはないのですが)、一般的には違います。
実はこれらは話し手と聞き手との位置関係で決まるのです。
自分が話しているとき、自分に近く相手から遠いものを指すときは「これ」、自分からも相手からも遠いものを指すときは「あれ」、自分から遠く相手に近いものを指すときが「それ」なのです。
このように日本語では空間の位置関係を示すとき、自分(話し手)と相手(聞き手)を基準として「これ・あれ・それ」を使い分けるのです。
自分が話しているとき、自分に近く相手から遠いものを指すときは「これ」、自分からも相手からも遠いものを指すときは「あれ」、自分から遠く相手に近いものを指すときが「それ」なのです。
このように日本語では空間の位置関係を示すとき、自分(話し手)と相手(聞き手)を基準として「これ・あれ・それ」を使い分けるのです。
英語の「this・that・it」
では、英語の場合はどうでしょうか。
英語の場合は自分からの距離で決まります。
自分(話し手)から近いものは「this」、自分から遠いものは「that」です。
では、「it」は中間かというと実は違います。
「it」はものを指しているのではありません。
「it」は先に出てきた語を指しているのです。
This is my book.
I bought it yesterday.
That is your book.
I didn't buy it yesterday.
このようにthisでもthatでも2行目ではitを使っています。
つまり、itは距離で決まるのではないのです。
これは前者では「my book」を指し、後者では「your book」を指しているのです。
ものそのものというよりは語(言葉)を指していると考えます。
英語の場合は自分からの距離で決まります。
自分(話し手)から近いものは「this」、自分から遠いものは「that」です。
では、「it」は中間かというと実は違います。
「it」はものを指しているのではありません。
「it」は先に出てきた語を指しているのです。
This is my book.
I bought it yesterday.
That is your book.
I didn't buy it yesterday.
このようにthisでもthatでも2行目ではitを使っています。
つまり、itは距離で決まるのではないのです。
これは前者では「my book」を指し、後者では「your book」を指しているのです。
ものそのものというよりは語(言葉)を指していると考えます。
以上のことを踏まえると謎が解ける!
以上のことを踏まえると、なぜ辞書にthatには「あれ、それ」と書いてあったのかが分かります。
「あれ」は自分からも相手からも遠いものを指す言葉、「それ」は自分から遠く相手に近いものを指す言葉。
だから、自分から遠いものを指すthatは「あれ」(相手からも遠い)にも「それ」(相手に近い)にも対応し、日本語の翻訳するときは相手との位置関係も加味して「あれ」と「それ」を使い分けないといけないのです。
また、itは距離とは関係なく前述の語(言葉)を指すと言いましたが、日本語の場合はその言葉との時間的距離関係で指示語が決まります。
時間的に近い時は「これ」、遠い時は「あれ」です。
「それ」は一般的に時間的距離に関係なく使える言葉で、だから翻訳のときは時間的距離を気にせず使える「それ」を採用しているのです。
つまり、英語の辞書に書いてあったthatの「それ」とitの「それ」は別物であったのです。
このように言語間の解釈の違いを正しく理解すれば言葉の使い分けも分かり、混乱することなく第二言語を学ぶことができるのです。
「あれ」は自分からも相手からも遠いものを指す言葉、「それ」は自分から遠く相手に近いものを指す言葉。
だから、自分から遠いものを指すthatは「あれ」(相手からも遠い)にも「それ」(相手に近い)にも対応し、日本語の翻訳するときは相手との位置関係も加味して「あれ」と「それ」を使い分けないといけないのです。
また、itは距離とは関係なく前述の語(言葉)を指すと言いましたが、日本語の場合はその言葉との時間的距離関係で指示語が決まります。
時間的に近い時は「これ」、遠い時は「あれ」です。
「それ」は一般的に時間的距離に関係なく使える言葉で、だから翻訳のときは時間的距離を気にせず使える「それ」を採用しているのです。
つまり、英語の辞書に書いてあったthatの「それ」とitの「それ」は別物であったのです。
このように言語間の解釈の違いを正しく理解すれば言葉の使い分けも分かり、混乱することなく第二言語を学ぶことができるのです。
「第二言語学習は置き換え作業」という誤解
生徒たちが英語を習い始めるとき、一つの英単語に対して一つないしはいくつかの日本語を当てて、英語を日本語に置き換えるという作業をします。
この「置き換え」が第二言語を学ぶことと勘違いしてしまう生徒がとても多いです。
よく「英語は単語さえ覚えればいい」という生徒がいますが、これは正にこの勘違いを象徴する発言です。
このように生徒が言うのは、第二言語習得が単なる言葉の置き換えではない点をしっかり正確に説明していない教える側の問題でもあります。
この誤解を生徒が真に受けて勉強を進めていくと、やがて彼らは「言葉の壁」にぶち当たり、置き換え作業では上手くいかない事実に直面し英語が分からなくなってしまいます。
この「置き換え」が第二言語を学ぶことと勘違いしてしまう生徒がとても多いです。
よく「英語は単語さえ覚えればいい」という生徒がいますが、これは正にこの勘違いを象徴する発言です。
このように生徒が言うのは、第二言語習得が単なる言葉の置き換えではない点をしっかり正確に説明していない教える側の問題でもあります。
この誤解を生徒が真に受けて勉強を進めていくと、やがて彼らは「言葉の壁」にぶち当たり、置き換え作業では上手くいかない事実に直面し英語が分からなくなってしまいます。
言語を学ぶならconceptだけでなくnortionまで
他の言語を学ぶということはそんなに単純なものではないのです。
同じ概念があったとしてもそこには当然ずれがありますし、時にはその概念すら一方にはない場合もあります。
これをconceptとnortionと言いますが、辞書を引くとどちらも「概念」書いてあるのではないでしょうか。
また、ややこしい話になっていますが、conceptとは社会や文化に関係なく人類が共通して持っている考え、そしてnortionとは個々の社会や文化に特有の考え、conceptの具体的な中身です。
例えば、「愛」という概念は人類全体が共有しているのでconceptです。
しかし、その「愛」が具体的に何を意味しているかは社会や文化で微妙に異なります。
男女の恋愛だけかもしれないし、親子や友人との親密な関係も含めるかも知れません。
同性や多彩な性別間でも成立するかどうかも、社会や文化で異なります。
このように一つのconceptに対してnortionは多様であり、言語を学ぶときはconceptだけでなくnortionまで理解しないといけません。
そして、自分の母語と比べnortionの違いまで知ることができれば、言葉を変換するときにそのずれを補正することができ、より正確なコミュニケーションと相互理解が可能となります。
二言語間の違いを把握して、対象言語の話者の考え方や社会文化まで理解する必要があるのです。
本来言語習得にはそこまで勉強する必要があるのですが、残念ながら学校教育ではそこまでするには限界があります。
だから、その限界を補って勉強しないと頭の中が混乱し訳が分からなくなるのです。
まあ、それも難しいのですが。
今回は英語の「this・that・it」と日本語の「これ・あれ・それ」の違いに注目し、言語習得の大事なお話をしました。
勉強は簡単ではありませんし手間のかかるものです。
でも、それを面倒と考えず新たな発見と考えれば、勉強に喜びや楽しみを見出すこともできます。
英語の勉強もそうで、暗記ばかりと考えれば辛くつまらないですが、より深く学びこれまで知らなかったことに気づければ学習者の世界も大きく広がります。
そして、言語は言語そのものから自分の世界を広げるだけでなく、今度は言語を使い自分の世界を更に大きく広げることができる強力な道具でもあります。
せっかく学校で学ぶのだから、単に英語の表層に留まるだけでなく、それを使って自分の視野を広げ、自身の成長に役立ててほしいと願います。
同じ概念があったとしてもそこには当然ずれがありますし、時にはその概念すら一方にはない場合もあります。
これをconceptとnortionと言いますが、辞書を引くとどちらも「概念」書いてあるのではないでしょうか。
また、ややこしい話になっていますが、conceptとは社会や文化に関係なく人類が共通して持っている考え、そしてnortionとは個々の社会や文化に特有の考え、conceptの具体的な中身です。
例えば、「愛」という概念は人類全体が共有しているのでconceptです。
しかし、その「愛」が具体的に何を意味しているかは社会や文化で微妙に異なります。
男女の恋愛だけかもしれないし、親子や友人との親密な関係も含めるかも知れません。
同性や多彩な性別間でも成立するかどうかも、社会や文化で異なります。
このように一つのconceptに対してnortionは多様であり、言語を学ぶときはconceptだけでなくnortionまで理解しないといけません。
そして、自分の母語と比べnortionの違いまで知ることができれば、言葉を変換するときにそのずれを補正することができ、より正確なコミュニケーションと相互理解が可能となります。
二言語間の違いを把握して、対象言語の話者の考え方や社会文化まで理解する必要があるのです。
本来言語習得にはそこまで勉強する必要があるのですが、残念ながら学校教育ではそこまでするには限界があります。
だから、その限界を補って勉強しないと頭の中が混乱し訳が分からなくなるのです。
まあ、それも難しいのですが。
今回は英語の「this・that・it」と日本語の「これ・あれ・それ」の違いに注目し、言語習得の大事なお話をしました。
勉強は簡単ではありませんし手間のかかるものです。
でも、それを面倒と考えず新たな発見と考えれば、勉強に喜びや楽しみを見出すこともできます。
英語の勉強もそうで、暗記ばかりと考えれば辛くつまらないですが、より深く学びこれまで知らなかったことに気づければ学習者の世界も大きく広がります。
そして、言語は言語そのものから自分の世界を広げるだけでなく、今度は言語を使い自分の世界を更に大きく広げることができる強力な道具でもあります。
せっかく学校で学ぶのだから、単に英語の表層に留まるだけでなく、それを使って自分の視野を広げ、自身の成長に役立ててほしいと願います。