塾長ブログ

2023.01.09

学校の学習内容で昔と変わったこと

学校の学習内容で昔と変わったこと
学問の世界では新発見があると、これまで正しいとされていたことが否定され、新説が提示されることがあります。
それに関連した分野も大きく変更を余儀なくされて、これまで常識と思っていたことがガラッと変わることさえあります。
また、これまでの内容にそれまでなかった新しい事実が付け加えられることもあります。
このようにして学問は日々進歩していくのです。
学問の進歩に伴い変更が起こると、当然学校での学習内容にも大きな影響が出て、これまでと教える内容が変わってしまいます。

学校教育の変化は、政府の教育に対する考え方(パラダイム)が変わることでも起きます。
それまでの教育観が変わり、教授方法が変わると、同じ内容を教えるにしても、それに対するアプローチが変化し、教え方や考え方が大きく違っていきます。

勉強とは常に変化するものとも言えます。
よって、我々が学校で習って当たり前に思っていたことが、今の教育では全く教えられなかったり、部分的に異なる内容になったりすることがあります。

今回はそのような、今と昔では変わってしまった学習内容をいくつか挙げてみたいと思います。

1.優勢劣勢→顕性潜性!

今年度から理科の生物において大きな変更がありました。
遺伝に関してなのですが、これまで両親から受け継いだ遺伝子で形質の表れやすい方(遺伝子一つでも発現する方)を「優勢」、表れにくい方(遺伝子が二つ揃わないと発現しない方)を「劣勢」と言っていました。
それが今年度より「顕性」「潜性」に変わり教科書に記載されています。
これは日本遺伝学会の提言によるもので、「優勢」「劣勢」という表現が遺伝子の優劣に誤解される可能性があるからだそうです。
例えば「直毛」は遺伝的に劣勢(潜性)遺伝子によるものですが、だからと言って直毛の人が人間として劣っているとか、生物として生存に不利という訳ではありません。
でも、「劣勢」と生徒が聞くと、直毛の人に対して見下した態度を取るかも知れません。
そのことを危惧してのことです。
学術的には何も変わりませんが、そのような社会背景を考慮して変更がなされました。
将来的には遺伝について「優勢」「劣勢」と言っても理解できない生徒が出てくるわけですね。

2.冥王星は惑星ではない?

もう一つ理科にちなんで惑星の話をしたいと思います。
子供の頃、太陽系の惑星というと「水金地火木土天海冥」の九つと覚えた人も多いと思います。
これも国際天文学連合によって2006年に、冥王星が太陽系の惑星から外され、今の学校の教科書では「水金地火木土天海」の八つが太陽系の惑星となっています。
冥王星は「準惑星」となったのです。
公式には惑星の定義である①太陽の周囲を公転している②(十分に大きく)球形をしている③起動近くに他の天体が存在しないの③を満たしていないからとされています。
当時、太陽系の外延部にいくつかの冥王星と同程度の大きさの天体が見つかり、これらも惑星として加えてしまうと太陽系の惑星の数が多くなってしまうから、冥王星を外すことでこれを防いだのが真相のようです。

3.いい国作ろう鎌倉幕府?

鎌倉時代の始まりは「いい国作ろう鎌倉幕府」だから1192年と語呂合わせをしたと思います。
しかし、今は「いい箱作ろう鎌倉幕府」で1185年になっています。
これは鎌倉幕府の成立が源頼朝が征夷大将軍になった1192年と以前はしていたのですが、彼が権力の基盤を築き実質的に政治を行っていたのは1185年からとの見解を採用したためです。
特に歴史的新発見があった訳ではないのですが、再定義によって今の生徒たちは1185年が鎌倉幕府の始まりと覚えています。

4.聖徳太子は存在しない?

次に同じく歴史から。
「聖徳太子は存在しない」と聞いたら皆さんはきっと驚かれることでしょう。
しかし、今の教科書では聖徳太子は「厩戸王(聖徳太子)」とカッコつきで書かれるようになっています。
聖徳太子とは厩戸王の功績を称え後世の人が厩戸王に贈った名前です。
しかし、厩戸王が聖徳太子が行ったとされる歴史的偉業の全てを行ったかというと、どうも違うようです。
聖徳太子が行ったという「憲法十七条」も「冠位十二階」も、厩戸王が主体として確実に関与したという証拠がないそうです。
確かに聖徳太子があの数々の偉業の全てを一人でやったとしたら、多すぎる気もしますね。
しかし、厩戸王は当時の政治の中で中心的役割を担っていたのは確かなので、全て無関係だったとも考えにくい。
つまり、はっきりしていないというのが現実みたいです。
同様に「遣隋使の派遣」や「法隆寺の建立」も証拠不十分のようです。
聖徳太子というのは、天皇の中央集権化が進む中で、権威を持たせるために作り上げられた像であって、「聖徳太子」という称号が示す偉業の全てを行った人物はいないという見解が現在では優勢になっています。
よって、厩戸王という人物は存在したが、その人物が聖徳太子が行ったとされる全てをやったとは疑わしいので、教科書も上記のような表記または厩戸王のみ記載し聖徳太子は書かないようになっています。

5.仁徳天皇陵は仁徳天皇の墓ではない?

子供のときに「仁徳天皇陵は日本最大の古墳」と習った人も多いことと思います。
しかし、今、この古墳は教科書では『大仙古墳』と呼ばれています。
その理由は次の通りです。
この古墳は宮内庁により「仁徳天皇陵」として管理されているのですが、実際にはこの古墳の調査は行われておらず、本当に仁徳天皇が埋葬されているか確認されていません。
考古学者の中にはこの古墳が仁徳天皇のものとするのに疑問を持っている者も少なくありません。
いずれにしても、仁徳天皇が埋葬されているかどうかもはっきりしていないのに「仁徳天皇陵」と名付けてしまうのは誤解を招くということで、一般の古墳と同様に地名を取って現在では「大仙古墳」と教科書では書かれています。

6.日本最古のお金は和同開珎?

日本で最初に作られたお金は「和同開珎」と習った方も多くいると思いますが、これも実は変わっています。
1995年に群馬県上栗須遺跡でさらに古い「富本銭」が見つかり、現在ではこちらが日本最古の日本で作られたお金となっています。
このように考古学の分野では新しい発見がなされるたびに情報がアップデートされ、それに基づいて教科書の内容も変更されるので、昔と今の学習内容の違いが大きくなりやすい傾向にあります。

7.リットルの表記は大文字、小文字?

もう一つ昔と変わってしまった学習内容として「リットル」とあげたいと思います。
ご存知の通り液体の量を表す単位ですが、多くの大人は「小文字で書く」と習ったと思います。
しかし、これも今では大文字表記に変更されています。
小学校で習うリットルですが、2010年度までは小文字のエルの筆記体である「ℓ」で教えていましたが、2011年度以上は「L」に突然変更されました。
理由は「国際ルールに合わせた」ということです。
ただ、これも実はひと悶着ありまして、本来単位というのは人名にちなんだもの(ニュートンのN、ワットのWなど)は大文字で書きますが、そうでないもの(メートルのm、グラムのgなど)は小文字で書くことになっています。
従って、リットルは「ℓ」を使っていたのですが、そうすると斜体で書かないという別のルールに抵触します。
でも、普通の小文字の「l」を使うと数字の「1」と混同されるので、結局妥協案として例外的にリットルでは「L」となりました。

学校の学習内容の変化を看過しない

他にも細かいものを含めるとたくさんあります。
純粋に学問としての情報更新に伴うもの、考え方の変化により方法などが変わってしまったもの、政治的理由などで意図的に変更されたものなど理由も様々です。
定期的に行われる文科省の指導要領の改訂に伴い、学校の学習内容は刻々と変化しています。
我々教える側もそうですが、親御さんとしてもこれらの改訂には注意をして目を光らせる必要があります。
本当にその改変が妥当なものなのか、これから学ぶ子供たちにどのような影響があるのか、しっかりチェックしなければなりません。
さもないと生徒たちが誤った考えに至ったり、損失を被ったりする可能性があるからです。



子供に勉強を教えるとき、「自分が習ったのとは違う」と愕然とすることがあると思いますが、その理由の一つは上記のような学習内容の更新に伴うものです。
この場合は「分からない・知らない」と言うのではなく、子供と一緒に自分の情報を新しくすればいいのです。
「へえ、昔はこうだったんだけど今はこう習うんだね」と言いながら子供と一緒に親も勉強する姿勢を見せてください。
こうすることで「自分と一緒に勉強してくれている」という安心感を子供に与え、「大人も必要な時は頑張って勉強するんだ」という手本を示すことにもなります。
大人の勉強する姿を見て「自分もやらなくては」と奮起するきっかけになると、それは勉強する子供たちにプラスの効果をもたらします。
また、自分の勉強のために一所懸命親も学んでくれていると思うと、感謝の念・信頼の念が子供たちに芽生えるでしょう
逆に「自分が知らないことだから」とすぐにさじを投げてしまうと、子供も勉強に対して分からないとき簡単にあきらめる癖がついてしまいます。
勉強を教えるというのは結構責任重大で、だからこそ教える者は最大限の努力を示さないといけません。
それでもどうしても手に負えないときは葛西TKKアカデミーに声を掛けてください。
いつでも力になりたいと考えていますのでご遠慮なさらずに。

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