塾長ブログ

2023.01.24

最近の東京における高校受験の傾向

最近の東京における高校受験の傾向
今年も入試シーズンが始まっています。
高校入試でも推薦入試、私立高校入試、都立高校入試と続きます。

学習指導要領が改訂され、都による授業料無償化もなされている現在、受験生の動向はどのようになっているのでしょうか。
今回は最近の高校受験の傾向について考えてみたいと思います。

私立高校

東京都が私立高校も含めた高校の授業料無償化を決め、受験における私立高校の立ち位置が大きく変わってきました。

以前は都立高校で落ちたときの滑り止めとして私立高校を受験する生徒が多く、例え合格しても都立高校も受かってしまえば辞退する受験生が一般的でした。
私立高校は授業料がかかり、その他の費用も含め家計からの出費が非常に大きいため、多くの家庭では節約のために、可能な限り都立に進んでほしいと希望していました。

しかし、私立高校の授業料無償化が決まってからは、授業料の負担がなくなり、そういう意味では都立高校と差がなくなったため、私立高校を第一志望にする受験生も非常に増えています。
とは言え、授業料以外の負担が減る訳ではないので、都立高校よりお金がかかることは違いありません。
それでも以前に比べれば費用の違いは雲泥の差であり、設備を充実させ優秀な教員を集めることで多くの受験生を確保しようと努力する私立高校のビジネス的戦略に魅力を感じる家庭も少なくありません。

また、私立高校の強みは今回の新型コロナウィルスによる混乱の中でも発揮されました。
特にコロナ禍で、学校のICT化が普及していなかった都立高校は休校となり授業が進められなくなり、遠くに受験生は厳しい大学受験を課せられることになりました。
一方私立高校では、オンライン授業やタブレット端末または個別のパソコンの配布などが行われており、学校の先生もこれらの機器を使った授業を既に取り組んでいたため、一斉休校になったときもオンラインを活用に授業が滞ることなく進められました。
この経験は多くの家庭に私立高校の優位性を実感させました。

また、文科省が進める教育改革に伴い、大学受験も難化し受験の方式もまだ定まらない現状に対し、自分の子供が確実に大学進学できるようにと、多くの家庭ではエスカレーター式の大学附属の私立高校を希望するようになっています。
これは特に中学受験において加熱していますが、高校受験においても影響がないわけではありません。
中途半端な都立高校では大学進学に不安を感じざるを得ませんが、実績が新規生徒の入学に直結し学校の存続に大きく関わる私立高校では、大学受験に対する対策も熱心にしてくれるという点で安心感があり、私立高校を目指す受験生とその保護者も増えました。
大学受験が不透明な現在、より確実な大学進学も私立高校を選ぶ理由の一つとなっています。

以上のことから、私立高校を第一志望とし、都立高校を受験しない受験生もたくさんいます。
私立高校の方が入試の日程が早いことから、早く受験勉強を終えられることも私立受験を希望する要因になっています。
また、学校にお金をかけている分、設備は充実し校舎も綺麗で、制服もおしゃれというのも受験生を引き付ける理由になっています。
これらのことから私立高校は以前に比べ狭き門になっています。

都立高校

上記のように私立高校を第一志望する生徒が増えた結果、全体としての都立高校受験者数は以前より減っています。
しかし、どの都立高校も志願者数が減っているかというと、そうではありません。
学校によってはむしろ増えているところもあります。
これはどういうことでしょうか。

都立高校は私立高校に比べ費用の負担が小さいので、今も受験生は多いです。
しかし、最近の傾向として二極分化しているように思われます。
つまり、人気のある上位校には受験生が集中し狭き門となっているのに対して、下位校は生徒が集まらず軒並み定員割れになっているのです。

このような状況が発生したのはやはり教育改革が原因でしょう。
大学受験がセンター試験から共通テストになり、試験問題に記述問題が含まれるようになるなど、大学受験は以前より難しくなっています。
現在は延期となっていますが、いずれ英語のスピーキングテストも導入されるそうです。
大学受験にも内申書の提出が要求され、しかも、そこには成績だけではなく受験生の部活や委員会、ボランティアなど様々な活動の記録や実績も書かれます。
授業内容や指導方法も変わり、一方的な講義型ではなく双方向の議論討論、研究調査とプレゼンテーションなど様々なものが高校生活の中に要求されます。
このような変化に上位の高校であれば生徒も優秀なので対応できるでしょうが、勉強に対するモチベーションが低く、中学の内容からやり直さないといけないような下位の高校では、それは無理です。

つまり、大学進学したければ上位の高校でないといけないということ、言い換えれば、進学する高校で(高校受験の段階で)大学進学がある程度決まってしまうという現実が、都立高校受験における二極分化を引き起こしているのです。
上位校は倍率が何倍にも跳ね上がり、下位校は二次募集、三次募集をしても募集定員を満たさないのです。

もう一つの注目すべき傾向としては、安全志向が広がっていることです。
景気が一向に上がらない状況で、家計に余裕のない家庭は増えています。
だから、少しでも出費を押させるために、受験も確実に一発で合格してほしいという家庭は少なくありません。
そこで実力は十分にあるのに、わざわざワンランク志望校を落として受験する受験生がたくさんいます。
大抵、このような生徒は受験を一校しかしません。
滑り止めがないので不合格のときは大問題になりますが、だからこそ、ランクを下げて受験します。
結果として、これまでは合格できたはずの生徒が、上位校から降りてきた受験生に合格枠を食われて不合格になるということも起こっています。
これも都立高校受験で注意すべき点です

通信制高校

最後に通信制高校について述べたいと思います。
通信制高校は自分のペースで勉強が進められるという点が特徴で、特に中学時代不登校などでまともに授業を受けられなかった生徒、授業は受けたけどついていかなかった生徒が受けることが多いです。
つまり、中学時代まともに勉強ができなく、一般入試での高校進学が難しい生徒たちの受け皿として注目されるようになり、受験生の数も年々増加傾向にあります。
自分の時間をより多く持つことができ、自分のやりたいことをしながら高校卒業をしたい生徒にも人気です。
基本的に学力テストもなく、作文と面接で合否が決まるので、落ちるということは先ずありません。

ただし、自分をしっかりコントロールしてやるべきことをきちんとやらないと、外部からの強制力が弱い分、バイトや遊びの方がメインとなってしまい、入学してからまともな勉強が身に付かない可能性が高いです。
自律はまだ幼い生徒たちにとって難しい問題で、本人の自覚だけでなく周囲の的確なサポートが必要でしょう。
自分の心と向き合いながら、逃げ出すことなく大学受験が取り組めるかというと疑問であり、多くの生徒は進学が難しく、途中でドロップアウトする場合も少なくありません。

入学卒業が楽だからという安易な理由で選ぶのではなく、しっかりとした目標意識とそれを実現させる強い心がないと、高校三年間が何もなく過ぎてしまいます。
最近の高校受験の傾向について述べてみました。
以前の都立が第一志望で私立が滑り止めという考え方は、今ではかなり弱まったと感じます。
理由としては第一に東京都の授業料無償化、第二に教育改革に伴う高校の授業内容と大学受験の変化、第三に不況による教育に対する出費の削減と安全志向が挙げられます。

この変化が生徒たちにどのように影響し、彼らの将来をどのように導いていくかは不明な点が多いですが、これまで日本の教育制度は勉強を頑張ればどんなに社会的地位が低くても上昇できるという、社会的モビリティを可能にし、全ての生徒に希望と勉強の価値を与えてきました。
しかし、現在の二極化はこのようないい意味での社会的均一を壊し、社会格差をより広げる一因になるのではないかと危惧しています。

いずれにしても、当事者である受験生とその家庭は情報をしっかり集め、より良い選択をして入試という人生の試練の一つに立ち向かってほしいと思います。
必要であれば、葛西TKKアカデミーもお手伝いしますので、気軽にご相談ください。

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