塾長ブログ

2023.07.28

高校入試の英語のスピーキングテストについて(私見を含む)

 

高校入試の英語のスピーキングテストについて(私見を含む)
夏休みに入り今年もいよいよ受験勉強に本腰を入れないといけない時期になりました。
受験生にとって、これほどまとまった時間を自由に使える夏休みは、自分の実力を大きく伸ばす最後のチャンスだと思ってください。
(冬休みは実力を伸ばす時期ではなく定着させる時期なので、新しいことを覚えるときではありません。)
この貴重な時間を無駄にして後悔することのないように、猛暑ではありますが、毎日を過ごしてください。

ところで、このように時間のある時だからこそ、普段できない勉強をするにも最適です。
中でも去年から導入された英語のスピーキングテストの対策は、学校のある時ではなかなかできないでしょう。
「何をどう勉強すればいいか分からない」という人も多いと思います。
そういう人は是非葛西TKKアカデミーにご相談ください。
こちらでしっかりご指導いたします。

また、夏休みにスピーキングテストの対策をした方が良い理由がもう一つあります。
それはスピーキングテストが他の学力テストに先んじて行われるということです。
今年は11月26日の予定です。
つまり、二学期の半ばにテストが実施されるのです。
学校の日常に忙しい二学期は到底しっかり準備することはできないでしょう。
だから、今のうちにスピーキングテストの対策をしましょう。



ところで本日のお話ですが、先ほど触れたスピーキングテストについて考えてみます。
ご存知の方も多いと思いますが、東京都教育委員会では教育改革に伴い、高校の入試制度の見直しを行いました。
そこで新たに導入されたのが、英語の話す力も評価するスピーキングテストです。
これは大学入試でも導入が図られましたが、その公平性の不安から多くの反対の声が上がり、実施直前で延期となりました。
では、なぜ高校入試で実施されるのでしょうか。
これは指摘されている問題点が解決したから実施されるのではなく、大学入試という全国規模のテストでは合意が得られなかったので、先ずは東京都という限定された範囲で実施し、そこから既成事実を作り上げることにより、大学入試での導入を実現しようという目論見が見え隠れします。

スピーキングテストとは

以上のように問題のあるテストではありますが、東京都が決定したからには受験生はそのテストを甘んじて受けるしかないのですが、では、実際行われたスピーキングテストはどのようなものだったのでしょうか。

試験当日、受験生は指定された時間に各会場に集まります。
そして、受験生は指定された席に座り、そこに用意されている端末についているヘッドフォンとマイクを装着します。
時間になると一斉に試験が開始されます。
一応録音に関しては他の生徒の音声が混入することはないようになっているようです。
テストはこの端末の指示に従い行われ、受験生が発した音声は端末に記録され、それを基にスピーキングテストの結果が出ます。
だから、事前に機器の操作や試験の概要を把握することは必須で、いきなりぶっつけ本番では絶対に上手くいきません。
テスト前に十分な準備をすることが高得点のカギです。

テストはA~Dの四つのパートに分かれていて、パートAは短めの英語の文章を読む問題、バートBは図表を見ながら質問に答える問題、パートCは4コマで示されているお話を英語で説明する問題、パートDは答えが限定されないオープンクエスチョンに対し理由も含めて自分の考えを答える問題です。
端末で録音された音声が母語話者である採点者に送られ、最終的にはA~Fの6段階で評価され、それぞれのランクに合わせAが20点、Bが16点と4点刻みでFは0点となります。

スピーキングテストの問題点

大学入試のときもそうですが、英語のスピーキングテストの導入には多くの反対の声があります。
それはこのテストが問題ありと感じている人が多いからです。
一番多い懸念はスピーキングテストの公平さと公正さが保障されないというものです。
音声を録音するわけですから、みんな等しく好条件の環境で録音できるのかという問題。
実際に去年のテストでは、「他の受験生が解答する声が聞こえカンニングもできる状況だった」たという話も聞かれました。
例えばテストの開始のボタンを押すタイミングを少しずらせば、他の人の解答を聞いてから自分の解答を録音できる可能性があります。
出題の音量を下げれば周囲の音を聞くことは出来たそうです。

テストは前半後半に受験生を分けて行われたそうです。
これは一つの端末を二人の受験生で利用するためで、前半組がテストを受けた後、教室に控えていた後半組が前半組の使っていた端末を使って受験をします。
前半組と後半組の教室は隣同士になっていたらしく、後半組の受験生は前半組の受験生の漏れ聞こえる解答から問題を推測することができたし、間の休み時間に問題に関する情報が提供されていたという報告も聞かれています。

そして、それより最も気にかかるのがやはり受験生の「話す力」を公平かつ公正に採点できているかという点です。
ネイティブで研修を受けた者が一人の受験生の解答に対し二人が当たり採点することになります。
しかし、人間が耳で聞いて各自が判断するわけですから、採点の厳しい人と甘い人が出るのは否めないでしょう。
つまり、どの採点者に当たるかで評価が大きく変わる可能性があるということです。
この点に関しては上記のように研修等で評価の均一性を図ることになっていますが、それ以上のことは出てきていません。
最終的には採点者の判断にゆだねるということです。

また、「採点内容の開示はしない」という点も、多くの人に疑念を抱かせています。
言い換えれば、採点ミスがあったとしても誰も指摘できないということです。
点数としての結果しか出ないので、自分のどこが悪くどのように減点されたのかも分かりません。

更に、スピーキングテストを受けなかった受験生には見込みの評価が与えられるという、重要な試験ではありえないような方法が取られていることも疑問視されている。
テストを受けなかった生徒は本来なら点数がもらえないはずだが、周囲の受験生の点数分布と当人の学力テストの結果から見込みの評価がもらえます。
だから、スピーキングテストが苦手な受験生はわざとテストを受けない方が良い結果になる可能性があるのです。
これではスピーキングテストを実施する根本の意味が失われます。

このように多くの問題点の指摘があるのですが、東京都教育委員会は今年も同様にスピーキングテストを実施することを決定しております。

去年の結果を見て思うこと(私見)

ESAT-Jではテスト結果をA(20点)、B(16点)、C(12点)、D(8点)、E(4点)、F(0点)の6段階に評価します。
そして、色々問題点を抱えながらも強行されたスピーキングテストですが、結果は次のようになりました。
なんとA~Cの評価を受けた受験生が73.8%にも上ったのです。
これはどういうことでしょうか。

「これは受験生がものすごく頑張った結果だ」と好意的に捉えている人もいるようですが、私はそうは思いません。
普段生徒たちが英語を読んだり話したりするのを聞いても、これほど「話す力」がすぐれているとは思いません。
受験生も初めて実施されるスピーキングテストで過去問もない状態で、本当にしっかりまとも対策ができたのかというと、そんなことはないと言わざるを得ません。
それは現場で実際に生徒を指導する立場にある私がよく分かります。
対策するにも誰も受けたことのないテストに対して、ある程度の情報が提供されていると言っても、手探りでやっている感は否定できません。
だから、十分にこのテストに対して準備できていたかというと、はなはだ疑問です。

では、この結果はどのように捉えるべきでしょうか。
私は単純に「採点者が甘かった」「画一的で本来求められている評価ができなかった」からだと考えます。

初めてのテストで採点を厳しくし全体の平均点が下がると、当然テストの内容に関して多くの疑問の声が寄せられるでしょう。
先の述べたように「採点内容の開示はしない」のであって、唯一外部へ提供されるものがテスト結果です。
それが低ければだれもが不満を持ち、テストに対して懐疑的になります。
それよりは、甘く点をつけておけば、疑問を持っていたとしても高得点をもらっているので、反対の声は上げづらくなります。
採点者自身も厳しくつけたことで受験生や関係者から批判を受けるのを恐れ、採点が甘くなってしまったというのも人の道理でしょう。

もう一点の「画一的で本来求められている評価ができなかった」に関しては次のような意味です。
四技能の中でも「話す力」は明確に評価の基準を作りづらいので、採点者の裁量に任せる所が多くなりがちです。
例えば、「上手に話す」と言っても、それは発音がネイティブに近いという意味なのでしょうか。
それとも「コミュニケーションが的確で自分の意思を言葉で相手に正確に伝えられる」ということでしょうか。
そして、両者とも客観的な数値化はできないので、評価そのものの判断は採点者の感じ方次第ということになります。
これがしばしば指摘されている「公平性の欠如」という問題です。

そこで、これを回避するために画一的な基準でスピーキングテストの評価を行ったのではないかと考えたのです。
どういうことかというと、例えば「Do you ~?」の質問に対しては「Yes, I do.」か「No, I don't.」と答えなければいけないとすることです。
こうすれば明確に○×が付けられます。

しかし、これにも疑問点があります。
「話す力」を評価するということですが、実際の英会話の中でネイティブの人たちは「Do you ~?」の質問に対しては必ずしも「Yes, I do.」か「No, I don't.」で答えている訳ではないということ。
このように形式だけに縛って評価することが、生徒たちの「話す力」を伸ばすことにつながるのだろうか。
また、このような画一的基準で評価するならば、それはスピーキングテストでなくライティングテストでも十分だということ。
つまり、これではスピーキングテストをする意味がないということです。

以上が私の感じる問題点です。
スピーキングテストをすること自体は悪いことではないと思います。
これによって「話す力」に対する重要性が認識されれば、それはいいことです。
しかし、これまで議論したように、的確な評価方法が確立されていない現状では、スピーキングテストを入試という人生において重要で、だからこそ厳格に公平性という公正性が求められる試験に導入するには時期尚早と言わざると得ないと思います。
いろいろ大人の事情が見え隠れしているようですが、そのようなことで生徒たちを巻き込んでくれないでほしいというのが本音であります。



今年もスピーキングテストはあります。
しかも、他の試験よりずっと早い11月です。
勘違いして準備を怠ることのないようにお願い申し上げます。
葛西TKKアカデミーでも、このスピーキングテストの対策講座を実施していますので、関心のある方は是非お問合せください。

受験生の皆さん、この夏休みが勝負ですよ!
酷暑に大変でしょうが、何とか踏ん張って、後悔ないように毎日の勉強を進めてください。

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